いじめでうつ病に、そして自殺;東京高裁判決
いじめが自殺の一因だが、生徒がいじめでうつ病になり自殺するとまで学校側が予測することはできなかったーー東京高裁で28日、このようないじめ自殺事件判決があった。自殺した生徒の両親は判決を不満として上告する方針で「教育者はもっと子どもの目線でものごとをみるべきではないか」と訴えている(各紙28日夕刊1面)。
いじめを受けて1999年11月に自殺したのは栃木県鹿沼市立北犬飼中学校3年、臼井丈人君(当時15歳)。判決によると、臼井君は99年4月以降、同級生の男子2人から「プロレスごっこ」と称して暴行を受けたり、教室でズボンや下着を脱がされたりするなどのいじめを受けた。11月には不登校となり、同月26日、自宅で首つり自殺しているのが見つかった。
判決は「不登校になった99年11月までに、長期にわたるいじめを誘因としてうつ病にかかって、自殺した」とし、いじめがうつ病を引き起こして自殺に至った因果関係を認定した。さらに、同級生の暴行だけでなく、暴行を阻止せず放置した級友の態度についても、「それ自体がいじめとして自殺の一つの原因となった」と指摘した。しかし、学校側の責任について、判決は「教員らは加害生徒をいさめ、傍観した生徒も含めいじめを解消する行動を促すなどの注意義務を負う」とした上で、臼井君がほぼ毎日のようにいじめを受けていた3年の1学期中については、「教員らは加害生徒に対する指導もしっ責もせず、いじめ阻止の措置を講じなかった安全配慮義務違反があった」と判断。しかし、その後の自殺に対する責任については、「いじめが原因でうつ病にかかり自殺に至るのが通常起こることとは言い難く、教員らはうつ病までは予測できなかった」と、学校側の安全配慮義務違反を認めなかった。
この判断から裁判長は賠償額を1100万円と認定し、和解で遺族が受取った240万円を差し引いた860万円の賠償を栃木県などに命じた。一審判決はいじめから自殺まで5ヶ月以上経っていたことを理由にいじめと自殺の因果関係を否定したが、高裁判決はうつ病への罹患を認めることでこの期間の溝を埋める形となった。原告側代理人によると、いじめでうつ病にかかった結果、自殺したと認めた司法判断は初めて(読売)という。
<谷口のコメント>
◎いじめ放置は自殺に至ること、肝にめいじて◎
判決の言う「安全配慮義務違反」というものの中身がよく分からない。判決はこれを2段階に使っているようだ。いじめ防止についての安全配慮義務違反はあったが、自殺については義務違反とまでは言えない、と。
これまでいじめから自殺まで時間が経過した場合はその因果関係が認められなかっただけに一歩進んだ判決と言えるが、これでは先生に甘すぎないか。たぶん、一足飛びに判例を変えるのを避けたかったのだろうが、いじめを受けて孤立した子どもがうつになって自殺に走ることは十分ありうることではないのだろうか。と言うか、自殺とはそういうものだろう。
先生という仕事はまことにしんどいものだと思う。しかし、いじめ放置は自殺に至る、ということを先生方は早く肝にめいずるべきだ。
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