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2006年8 月 2日 (水)

おかしいぞ朝日の名人戦横取り

  毎日のOBだからということでなく、今度の名人戦をめぐる一連の騒ぎは昨今の拝金主義を象徴するものとして不愉快だ。各紙報道によると名人位将棋戦の契約金つり上げを狙った日本将棋連盟が棋戦主催者の地位を欲しがる朝日新聞社と謀って毎日新聞社との主催契約を一方的に破棄通告してきたのが事件の本体。すったもんだの末に2日、将棋連盟の臨時棋士総会で毎日単独主催案が僅差で否決され、主債権は毎日から朝日に移る運びとなった(各紙2日朝刊)。

 どこが拝金主義かというと、名人戦という皆で作り上げてきた1つの伝統的文化イベントを単なるのれん代に換算してせりにかけた態度である。欲に目がくらんだ将棋連盟が悪いのはもちろんだが、新聞社としての矜持もかなぐり捨てて密謀の片棒を担いだ朝日新聞社はもっと悪い。夏の高校野球をはじめ多くの文化・スポーツ事業を育ててきた新聞社とは思えないやり口に唖然とする。

  朝日と同じく老舗の新聞社として毎日の主催事業も数多い。本社にいると部署ごとに分かれているので気付かないが、地方の支局に行くとその数の多さに驚く。読書感想文や農業記録、書道や絵画などの各種コンクールから野球、ラグビ―、駅伝などのスポーツ大会まで主催事業は数え切れない。支局はその地方における毎日の顔だから、支局長は主催事業のプロモーションに追われることになる。1年に100枚以上の表彰状を渡すことも珍しくない。 

  これらの事業の大半は非営利、アマチャの世界。毎日だけで推進できるものではない。ほとんどの事業には地域の各種団体によるサポート組織が出来上がっていて、現実には事業はそのサポーターたちや参加者、愛好者のやぐらに乗って進む。新聞社はそうした組織の考え方を尊重しながら主催者として、報道機関としての責任を果たしていく。

 毎日が将棋文化の発展を願って名人戦を創設したのは約70年も前のこと。
長い努力の末に発展して、将棋フアンへの影響力から新聞購読に力を発揮する側面が出てきたとしても、基本の精神は他の主催事業育成と変わらない。多くのフアンを土台にした将棋文化振興の共通の思いが名人戦文化を形作ってきた
はずだ。

 今回の密謀はこうした新聞社主催事業が堅持するべき「文化振興主義」をかなぐり捨て、育成の歴史と伝統を無視して金銭だけで解決しようとしたところに腐臭が漂う。将棋連盟もしょせん営利団体ではないか、という反論もあるだろうが、名人戦に寄せるフアン・読者の思いはまた別次元のものだ。確かに新聞社も霞を食って生きていくわけにはいかないが、朝日にはもっと矜持を持って欲しかった。

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