« 応援団ジャーナリズム | メイン | ニートに「発達障害」例 »

2006年8 月23日 (水)

注目集める教育バウチャー制度;安倍氏政権構想

  自民党総裁選に臨む安倍官房長官は政権公約の重点を「改憲と教育」に置くことを決めた(朝日23日朝刊1面)。安部氏はこれまでも講演などで「私たちが取り組まなければいけないのは教育の再生だ」と語ってきた。公約では継続審議となっている教育基本法改正案の早期成立を図り「家庭や地域、国を愛する教育」を目指すなど保守色の強い内容。教育バウチャー(利用券)制度は、子どものいる家庭に一定額の教育利用券を配り、親はその利用券を使って好みの学校で子どもに教育を受けさせることができる仕組み。学校選択の自由を広げ、学校間の競争を促がすことができる。

今月18日付けの本欄では麻生外相の政権構想原案でも「教育バウチャー(教育利用券)制度」の導入が盛り込まれることを伝えた。

 <コメント>◎負の部分の議論もきちんと◎
  バウチャーはアメリカの経済学者フリードマン氏が1962年に著した「資本主義と自由」にさかのぼる概念とされる。教育バウチャーも古くから言葉は知られていた。特に私立学校の占める比率が高い東京では公私の教育費負担を解消する手段として注目されてきた。バウチャー券は個人に支払われるからそれで私学へ子どもをやれば親の負担もだいぶ助かる。例えば都立高校にかかる費用を生徒一人当たりで割り直して年額20万円(?)のバウチャー券を発行すれば私学授業料の半分近く(?)が助かる、といった勘定だ。1980年代の初め、都議会社会党(当時)が「公私財政共通制度」案なるものを打ち出すという記事を1面で大きく書いた記憶があるが、それも一種のバウチャー制度の変形だったと思う。最近では不登校の児童生徒が通常の教育システムから外れた場合、フリースクールなど非定型の教育機関で教育を受ける際の費用に使えるという面からも注目されている。

 バウチャーと学力向上の相関関係は明らかになっていないが、公立不信の風潮の中で総裁選を機にバウチャー論議が一気に高まりそうだ。問題なのはバウチャー制度が市場原理主義に基づくものである以上、教育に過度の競争を持ち込む危険性があることだ。序列上位の学校にバウチャー券が流れ込むのは市場の常である。この先鋭化する学校の序列化が何を生み出すかは戦後社会が十分に経験してきたはずだ。教育バウチャー制度の導入には、経済格差社会の是正とにらみ合わせながら具体的なイメージで多面的な論争が不可欠と思う。

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
https://www.typepad.com/services/trackback/6a0128759be2a2970c0120a699f494970b

Listed below are links to weblogs that reference 注目集める教育バウチャー制度;安倍氏政権構想:

コメント

この記事へのコメントは終了しました。