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2006年8 月24日 (木)

ニートに「発達障害」例

  いわゆるニートと呼ばれる若者の中に生まれつきの脳の機能障害である「発達障害」の疑いのある人が含まれていることが厚労省の調査で明らかになった(読売24日朝刊1面)。「『頑張ればできる』式の職業訓練は発達障害者には強度のストレスとなり、うつなどの二次障害を生じさせる」という専門家の意見もあり、同省は実態をさらに調査したうえで就労支援策の見直しをする。

ニートは仕事も通学もせず、職業訓練も受けていない15-34歳の若者を指す言葉。発達障害は他人とかかわることが苦手で言葉の遅れがある「自閉症」、自閉症と似ているが言葉に著しい遅れがみられない「アスペルガー症候群」、注意が散漫で衝動的な行動を取る「注意欠陥多動性障害」、読み書きや計算が苦手な「学習障害」などに分類される。知能的にはまったく問題ない場合もあり、原因については専門家の間でも意見が分かれている。調査はニートの若者155人を対象に行い、23%に発達障害あるいはその疑いがあることがわかった。

<コメント>◎慎重な科学的裏づけを◎
近年、関心が高まり始めた発達障害だが、事件などマイナス行動と結び付けるには慎重な上にも慎重な科学的分析が必要だ。患者団体も安易な関連付けで発達障害児者が社会から偏見の目で見られることを恐れている。今回は厚労省の責任ある調査で出た結果を基に政策の変更を行おうという流れの中での記事であり1面トップに置くだけの価値はある。23%というのは高すぎる数字でにわかには信じがたいが、見逃せない数字であるのは間違いない。

発達障害とはっきり診断されないまでも、不適応の症状を見せる子どもたちがどんどん増えているのは事実だ。親しい退職校長がある区の教育相談員をやっている。ニュータウンに置かれた同区の教育相談室にその元校長を訪ねてあまりの盛況ぶりに驚いた。相談のための部屋が5室あるのだがわが子の教育相談に見える保護者らで終日フル稼働。どうしても必要なときは隣の公園のベンチで青空相談をやっているという。その元校長も1日7コマ(相談)をこなしている。その多くが学校不適応や発達障害の疑いがある子どもについて。自分の歩んだ学校現場ではなかなか見えなかった現実に驚くばかりという。なぜ、そんなに多いのかという問いにその元校長は「やはり社会が息苦しい、ということなのだろうか」と自問するように答えた。

ニート問題は日本の将来に覆いかぶさる暗雲である。様々な角度からの対応を急がねばならない。

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こんにちは。この度、注意欠陥多動性障害のHPを作りましたので、トラックバックさせて頂きました。サイト訪問者の方には有益な情報かと思っています。よろしくお願いします。 [続きを読む]

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「自閉症」という言葉を誤解して誤った使い方をしたり、まして自閉症をあからさまに見下すようなことを言うと、当事者側からクレームが入ることがあります。当事者とはとりもなおさず自閉症者またはその家族ということになるわけですが、まあ至極当然のことでしょう。...... [続きを読む]

コメント

この記事は私にとってとても実感の強いものです。身近な例をご紹介します。ご近所にまさに発達障害が原因のニートの子(Kさん)がいます。Kさんは幼いころよく遊んだ友達でもあり、30年たった今では私の子どもをよくかわいがってくれる、とても心優しいいい子です。ただ、少し言葉がうまく出てこない、発音できない、対人関係が苦手のようです。 30年も前です。Kさんが小学校に入る前に、区から“障害者学級のおすすめ”のような案内が届いたそうです。当時は「発達障害」やら「アスペルガー」なんて概念ないですから、お母さんは「ダウン症でもない。言葉は遅いけれど、考えることはまともだし、数や字はわかる。なのになんでこの子が障害者なんやろ!」と衝撃と絶望の底に突き落とされたと言っていました。区に間違いではないかと問い合わせたとも言います。Kさんはその後私立の中高を卒業し仕事に就きますが、彼女の“障害”を理解せずいじめる人がいて、辞めてしまいました。次の職場でも、同じようなことがおき、お母さんは「自信をなくしてしまったんやないかな…」と。だから「働け」と無理強いできないと。これらの話は30年たったつい最近、Kさんのお母さんが打ち明けてくれたものです。昔は「発達障害」という概念がなかったからだけで、こういう例は潜在的にかなりあるのではないか、と思っていたところです。明らかな肉体的な障害と違って、わかりにくい障害だと思います。国の就労支援も大事。同時に、こういう障害への社会の理解づくりが欠かせない。そのために、新聞テレビには、こういう現実を地道に報道する使命があると思います。

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