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2007年1 月 7日 (日)

「ハンカチ王子」が早大教育学部へ

 06年夏の甲子園大会で早稲田実業(東京都国分寺市)を優勝に導いた立役者、斎藤佑樹投手(18)が早稲田大学に推薦で入学することが内定した(朝日、読売7日朝刊社会面)。大学の教授会の決定を経て正式に決まる。朝日によると進学先は教育学部という。同投手は西東京代表で出場した昨年の全国高校野球選手権大会で、プロ野球・楽天チーム入りした田中将大投手を擁した駒大苫小牧(南北海道)と再試合となった決勝で投げ合い、優勝投手となった。マウンドで尻ポケットからハンカチを取り出して汗をぬぐう姿と涼しげな表情から「ハンカチ王子」の愛称で人気を呼んだ。早大野球部は13日に今季の練習をスタートさせるが、斎藤投手が参加するかどうかは未定という。

<谷口のコメント>
◎「一芸」入学おおいに結構;多様化すべし大学入試◎
 記事からは明らかでないが、内定の時期から言って斎藤君は附属・係属校推薦枠で入るのではないか。早大は高等学院、本庄高校の附属2校と早実など係属3高校から入学者を受け入れている。しかし、高校での勉強もまじめだったという斎藤君なら教育学部の自己推薦入学でも十分入れただろう。

 早大教育学部の自己推薦入学が活動的な高校生たちの間で近年評判になっている。高校での内申点平均が3.5以上なら学校長の推薦がなくても応募できる。決め手は自分が高校生活でどのくらい頑張ったか。その目安として学芸系、スポーツ系、全校的活動の例が公表されている。学芸系なら新聞コンクール全国大会優秀賞、書道全国大会入賞など、スポーツ系は国体、インターハイでの上位入賞など、全校的活動の例としては生徒会役員としての活動などだ。

  1次の書類選考を通っても2次で小論文と面接があり、なかなか付け焼刃の自己推薦では太刀打ちできないが04年度以来、同学部は自己推薦枠を拡大し毎年150人近くを入学させている。05年度入試では458人が志願し131人が合格した。自分が支援している書道団体「日本書写能力検定委員会」(本部・東京都青梅市)に関係する生徒も05春2人、すでに発表があった06春は3人が合格している。いずれも小さい頃から書写書道に打ち込み、全国大会に臨むに当たっては文字通り寝食を忘れて練習に打ち込み、課題の文字を1000回もそれ以上も書き込む子どもたちである。人生観も日々の生活態度も実にしっかりしている。

  早大入学センターでは「一芸入試という言い方は早稲田ではしません」と「一芸」という言葉を嫌う。大会成績で合格したのでは、という誤解を恐れるからだ。「1つのことに打ち込む精神力は全てのことに通ずる」というのが自己推薦入試のポイント。受験学力だけでは測れない学生の潜在的な能力を買うわけである。最近では高校の成績などは一切問わないAO(アドミッション・オフイス)入試が脚光を浴び始めている。欧米で広まったシステムで、高校生活で何をやったか、学部に入って何を何のためにやりたいか、その潜在力はあるか、を問う入試だ。学部事務局(オフイス)が自分の学部にふさわしい学生を選ぶ入試(アドミッション)なのである。

  一斉ペーパーテストの学力で選ぶ一般入試とは異なるこれら推薦・AO入試は、大学側の事情からも広まりつつある。大学全入時代に生き残るためには優秀な学生を確保しなくてはいけないからだ。文科省も全国の国公立大学についても来年度から推薦・AO入試比率を5割まで認める方向だと言われる。教育荒廃の元凶は偏差値という受験学力優先の大学入試にあるといわれて久しい。教育改革を下流(大学)から進めていくためにもペーパー入試以外の部分の充実は必要だ。ただ、推薦・AO入試が単なる学生の青田買いでしかない、という批判があるのも事実だ。各大学は入学者の追跡調査を綿密に行うなどして推薦・AO入試の効果を実証する努力を続けてほしいと思う。

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