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2006年11 月 3日 (金)

教育を歪めた3元凶:ある先輩へのメール

 「揺らぐ『教育基本法』 安倍政権と東京地裁判決に注目」(新聞通信調査会報)を拝読しました。安倍教育改革が戦後レジームを保守思想の観点から見直そうとする策動の一環とする先輩の視点は私も同感です。ただ、日本社会の現状を見れば、教育という営みの根底にある社会の在りようを大本のところで変革しなくては大変なことになると私は思っています。それは単に保守vsリベラルというような次元ではなく、もっと広く、深く「生きる」ことの意味付けを改めて問い直す作業ではないかと思うのです。その点で安倍教育改革に対して与党内部からも出始めている「もっと大所高所からの議論を」という批判は同感です。政府の教育再生会議に答えを迫るかのように噴出した「いじめ」と「単位履修漏れ、つまり大学入試の病理」はバウチャー導入や学校選択制の拡大、9月入学など制度をいじって解決するとは誰も思わないでしょう。

「戦後レジームのどこに欠陥があったのか探ってみて、政府の教育介入と日教組の暗闘が教育を歪めた元凶との思いを深めた」ーーという先輩の見方は私も全く同じです。ただ、

教育を歪めた元凶ということでは私は自戒を込めてその1つに新聞を加えております。なぜかというと、教育は白黒つけにくいグレーゾーンが広がる世界なのですが、新聞の宿命として限られた行数の中で素材をクリーンカットせざるを得ません。どうしてもセンセーショナルになってしまいます。その結果教育現場の萎縮を招くことが往々にしてあります。また教育ほど建前と本音の乖離が激しい分野はありませんが、これも新聞の宿命として理想主義(建前)で断罪する傾向が強くあります。

あるいは、先だっての研究会でも出たことですが、教育という素材は平板であるため取材体制及び紙面展開において十分な対応が取られにくいことがあります。普段は「所詮おんな子どものテーマ」とみなされがちです。新聞はまだまだ男社会の産物ですから。今回政治部が急遽、空席となっていた文科省の専門担当記者をクラブに配置したことは遅きに過ぎたとは言え、このところの他紙をしのぐいい紙面展開につながっているのではないでしょうか。

 最後に教育基本法の「不当な支配」禁止と東京地裁判決(9.21)のところですが、私は自民党が一番改正したいのはこの部分(教育基本法第10条1項)ではないかと思っています。先の国会で質問に立った町村元文科相が「現在の学校はマルクス・レーニン主義者に牛耳られている」との認識を示したことに驚きました。10条がマルクスレーニン主義者らの抵抗の根拠にされているということを言いたいのだと思いますが、きわめて古い発想ではないでしょうか。右ウイングからの改革を目指す安倍教育改革が教育現場に無用のまさつと混乱を引き起こすことを懸念します。

 年明けの現代マス・メディア研究会では発表者を務めるようにと天野さんから電話がありました。推薦者の先輩の胸を借りようと私見を多く述べさせていただきました。ご指導ください。(なお、このメールは私のブログにも掲載するつもりで書きました)

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