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2006年10 月29日 (日)

 政府、救済措置を検討;必修逃れ問題

 政府は28日、全国の高校で広がる必修科目未履修問題で、履修不足の生徒が卒業できなくなったり、補習で過度の負担が生徒にかかることを避けるため救済措置の検討に入った(毎日28日夕刊1面)。学校教育法では卒業は校長の承認事項となっている。通常は高校の全課程を修了したと認めるときに卒業させており、必修科目の受講は当然の条件だ。ところが政府・与党の間に浮上している案では来春の卒業生に限りこの条件を特例的に拡大し「一定の習熟度があると校長が判断すれば卒業を認める」ことにし、生徒がリポートを提出すれば卒業を認めようというものだという。

 27日には安倍首相が伊吹文科相に負担軽減の策定を指示、PTA団体が配慮を求める要望書を文科省に提出するなど文科省に「徳政令」を期待する声が強まっている(読売28日夕刊社会面)。文科省は「学習指導要領には法的拘束力があり、指導要領に従わないという方針を打ち出せば“超法規的措置”を取ることになってしまう」と苦慮しているという。
 このほかの救済策としては規定単位数の削減や出席日数の削減なども検討対象に上がりそうだ(読売29日朝刊1面)

 <谷口のコメント>
◎永田町の論理排し、文科省は筋を通せ◎
   社会部国会担当として政界の裏側を取材したことのある身としては、永田町(政界)ほど教育論議にふさわしくない世界との実感は今もぬぐいようがない。脱法は当然のことで、現実対応の美名の下に法理を曲げることぐらい朝飯前の連中だ。今回、政府与党の間に浮上している“解決策”も学校教育法の“読み替え”という手法である。カラスもサギとしかねない詐術と言って過言ではない。

  当初「ルール通りに」との考えだった文科省が揺らいでいるという(毎日29日朝刊2面)。もともと文科省は履修単位不足数は数十コマ(授業時間)と想定していたが、岩手県の私立高校で350コマも不足するケースが出るに及んで原則論では片付きそうにない情勢となったからだ。

  それでも文科省は筋を通して「ルールはルール」の姿勢を各地教委に厳然と示すべきだ。350コマ不足と言っても卒業までにまだ5カ月もある。1カ月で70コマ。1週間で18コマだ。土日も活用すればクリアできない数字ではない。大学入試との関係には目をつぶるしかないだろう。どだい、この350コマ不足のケースは学校認可が適正かどうかにも係わるほどの問題であり、なぜ10単位以上もの履修不足が起きたのか生徒側からの事情聴取も含め厳正な調査の上で対応を決めるべきケースだ。

  そもそも今回の騒ぎを見ていて「生徒も同罪ではないか」との感は否めない。同罪は言い過ぎとしても教科書は買ったのに授業がないなど疑問点はいくつもあったはずだ。でもやはり先生には言いにくいのだろうか。福井県のある県立高校の教諭がこんなことを言っている。「年度末に生徒に通知表を渡すと『どうして授業時間数と単位数が違うのか』という質問を生徒や保護者から毎年、受けていた。それでも『受験のため』と説明すると納得してくれた」(朝日29日朝刊社会面)。年度末に気付いても手遅れだ。

 そうした機微も分かった上であえて言うと、高校3年生といえばもう17か18歳だ。ばれたら身の不運と潔く先生とともに責任を果たすことぐらいは教えないと、今回の事件は悲惨なカラ騒ぎで終わってしまうのではないか。その後遺症はあまりに大きい。

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