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2006年9 月16日 (土)

セーラー服

最上川の支流に沿って土手をいくら歩いても目指すビジネスホテルは見えてこない。少し小雨模様にもなってきた。橋のたもとにセーラー服姿の少女が自転車を引いて信号待ちしているのが見えた。ちょっと迷ったが思い切って声をかけた。

 心配をよそに少女ははきはきと道筋を教えてくれた。地元中学校3年生の名札が胸に付いている。土曜日だが高校受験を控えて補習でもあったのだろうか。礼を言って立ち去ろうとしたら後ろから少女の声が追ってきた。「お送りしましょうか?」。

 「えっ?」と耳を疑った。土手の上、下に二股に分かれる道が分かりにくいので心配になったのだと少女は言う。リュックを背負って両手にコンビニのビニール袋をぶら下げた見知らぬオッサンになんて親切な娘なのだろう。東京ではあり得ないことだ。つい先日も自宅近くで、野球のユニホームを着て背中にバットを斜めに背負ったチビ坊主が可愛くて「どこへ行くの?」と声をかけたら一目散に逃げられたばかりだ。坊主が悪いのではない。先生に「道で知らない人とは口を聞いてはいけない」と教えられているのだから仕方がない。

 せっかくのご親切だし、歩きながら少し話したいな、と思ったが方向も違うようだし丁寧に断った。はにかんだ少女のほっぺがほんのりとりんご色に染まった。河原で家族連れが芋煮会に興じている。土手を行くこっちの胸もぽかぽかと温かかった。

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