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2006年8 月 7日 (月)

ネット時代の寺子屋

 埼玉県所沢市のはずれにある小さなパソコン塾を取材した。教室は民家の2階の6畳間。先生は営業畑から身を転じた50歳の主婦である。生徒は小中学生合わせて13人。月謝は1人8000円ほど(週1回1時間が4回)だから、「趣味の範囲ですよ」(先生)というわけだが、なかなかに楽しそうである。

  子育てに向いた仕事はないかと探しているときに、あるパソコンスクールチエーン会社の指導者募集広告を見た。パソコンは全く素人だったが、研修を受けさらに独学で勉強して教えるにふさわしいスキルを習得した。自宅の1室を教室に当てて開業したのが7年前。

  教材は本部が提供してくれる。おまけにネット時代だから教材は本部のサーバーから次々とダウンロードできるところがいい。この日も1人の生徒はパソコン画面の講師からオンライン講義を受けていた。6畳間が日本全国標準レベルの教室になるわけだ。

  パソコン塾といっても学んでいるのはさまざま。この日6年生はことわざつくりに挑戦していた。「虎の威を借る××」に文字を入れる。2年生は算数。ところどころで表作り色塗りなどのパソコン操作が加わる。「最近は学力向上を強調する側面が強くなりました」と先生が教えてくれた。

  隣のおばさん的な気さくさの先生は学校の教師とは一味違う生活感がある。指導ぶりはおもねるでもなし、威張るでもなし。てきぱきとかつ親身だ。この日の生徒は小2と小4、小6が2人、中2の計5人。小2以外は女子である。それぞれ学年も進度も違うので教える側は大変だが、5人だからなんとか目が届く。「あの子は芯が強いと思いますよ」など、子どもをよくつかんでいるようにも思えた。壁にはインターネットを通じて行われる入力コンクールなどのポスターがいっぱい張ってある。そこには小さな部屋がネットで全国とつながっている実感があった。

  もちろん塾と学校とは機能も実態も異なるが、同じ空間、同じ時間に子どもたちを閉じ込めなくてはいけないという強迫観念はもはや捨ててもいい時代ではないかと、6畳間の寺子屋でふと思った。

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