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2006年7 月20日 (木)

日本で進む学力の階層分化;OECD指摘

 勝ち組、負け組は子どもの学力格差にも反映しているーーOECD(経済協力開発機構、本部・パリ)の対日経済審査報告書が言い切っているのには驚いた。本当かなあ。日本でも学力格差は言われ始めているが、ここまで所得格差と関連つけた露骨な言い方はしていない。調べなくてはなるまい。

OECDは先進国の協力組織。日本など30カ国が加盟している。来日中のアンヘル・グリア事務総長が20日、日本記者クラブで会見した。OECDが18ヶ月ごとに出している対日経済審査報告書の発表を兼ねた会見で、報告書を書いたエコノミストのランドル・ジェームス氏も同席した。会見予告に日本で進む所得格差問題にも触れるであろうとあったのに興味を引かれたて出席したが、教育問題にも言及するとは思わなかった。

 会場で配られた報告書のレジメによると、日本の相対的貧困率は今やOECD諸国で最も高い部類に属するという。つまり金持ちと貧乏人の差が広がっているということだろう。主な原因は労働市場における二極化の拡大。つまり10年前には全労働者の19%だった非正社員(非正規労働者)の割合が30%以上に増加。またパートタイム労働者の時間当たり賃金は平均してフルタイム労働者の40%に過ぎない状態だ。これらは所得格差や貧困の固定につながっていく。2000年の日本児童の貧困率はOECDの平均を大きく上回る14%に上昇した。

ここから報告書は一足飛びに学力格差論を展開する。「民間部門の負担する教育費の割合が比較的高いことを考慮すれば、貧困が将来世代に引き継がれることを防ぐため、低所得世帯の子どもの質の高い教育へのアクセス権を確保することが不可欠である」と日本社会に警告を発するのだ。つまり日本は塾が盛んだが、塾に行けなくて満足な高等教育を受ける機会を逃す子をなくせ、と言っているのだ。さらに問題なのが次の指摘。「PISA調査において明らかになった日本における学力の階層分化の進行に対処すべきである」。

そうか、PISAはOECDが3年に1回行っている学習到達度調査のことだった。2003年の結果が発表されて「日本の子どもたちの学力が世界のトップクラスでなくなった」と大きな問題になった。もっか進んでいるゆとり教育からの方向転換もPISAなど国際学力調査の結果に追われてのことだった。しかし、PISAの結果が学力格差問題を提示しているという指摘はこれまで大きな声になっていない。事実なら国際ランキングなど比ではない大問題だ。報告書がどのようなバックデータを持って物を言っているのか調査してみたい。

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