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2006年6 月 4日 (日)

性被害者でも実名報道を;女児殺害事件の遺族訴え

  広島市で昨年11月、小学1年の木下あいりちゃん(7)がペルー国籍のヤギ被告に殺された殺人、強制わいせつ事件判決公判(広島地裁)を前に、あいりちゃんの父親が朝日新聞記者に心境を明らかにした(朝日24日朝刊社会面)。父親は報道が抑制されすぎていて性的被害の深刻な実態が社会に伝わっていないとして、「報道は、あいりちゃんの実名を用い、写真も掲載してほしい。性的加害の実態も詳しく報じないとなぜ検察側が死刑を求刑しているのか分からない」と語った。この記事はあいりちゃんのカラーのポーズ写真も添える一方、これまでの調べで、あいりちゃんの下半身に指で傷つけられたような跡が残っていたことなど性的暴行の実態を生なましく伝えた。

<コメント>◎報道の弱点突く◎
  異例の記事ですが、事件報道の最大の悩みに被害者遺族の側からずばりと切り込むものになっていると感じました。被害者が子どもであるときに限らず、強姦や強制わいせつなど性的事件の場合、新聞は匿名報道を原則としています。被害者が事件を背負って生きていくことへの配慮を最優先にするわけです。被害者が死亡している場合でも、死者の名誉、遺族の感情、読者感情を考慮してほぼ例外なく匿名報道となっています。

被害者が子どもの場合はなおさらです。性的犯罪が強く予想されるだけでも校名も児童・生徒名も伏せることも少なくありません、しかし、教育事件の場合、学校現場が匿名では本質にはとうてい迫れません。

匿名には犯罪事実をできるだけ書き込もうという狙いもあるわけですが、名前を消し、顔も見えない報道は実名報道に比べて訴える力は大きくそがれます。ところが、 性的犯罪に限らず、事件・事故報道の匿名化が進んでいます。個人情報保護法の施行などをきっかけにして警察発表が匿名で行われるケースが増えているほか、報道する側の自己規制も進んでいるように思えます。こうした「顔の見えない」匿名社会化の進行にこの記事は一石を投ずるものとなりました。

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