大臣の首
古巣の新聞社の先輩たちがやっている小さな勉強会に出た。この日のゲストは現職の大臣。出席の約束をしたときにはまだ福田内閣の改造前。ほどなく首相が辞任表明してでどうやら間もなく首が飛びそうという気の毒な状況で、しかも自民党某派閥の幹部として総裁選にきりきり舞いの間隙をぬって律儀にも出席してくれた。
勢い、勉強会は現在の政治の在り方についての批判、憤慨が議論の中心になったのだが、興味を惹かれたのがゲストが用意してくれた1枚の紙。「現憲法下で在任期間が短い国務大臣」の標題が付けられた紙には在任期間が短い順に5人の名前が書いてあった。
在任日数の少ない順に①長谷川峻さん(竹下内閣・法務大臣、在任4日)②遠藤武彦さん(安倍内閣・農水大臣、同8日)③永野茂門さん(羽田内閣・法務大臣)④佐藤孝行さん(第2次橋本内閣・総務庁長官)⑤越智伊平さん(同・農水大臣)。
今度再任されなくて首になっても、8月2日就任だからすでに1カ月は超えているし、、在任期間の短さでは上には上がいる、という慰めにも取れるが、ゲスト本人は2代続けての首相の政権投げ出しに憤懣やるかたない様子。「タイミングを計算しつくした」(ゲスト)福田さんはともかくとして、安倍ぼっちゃんの無責任ぶりを口を極めてこきおろした。自分が大臣として手をつけようとした政策を挙げながら、かないそうにない様子を嘆く姿に、大臣って何なんだという思いを深くした。
考えてみれば、旧文部省担当になった時の第102代小川平二文部大臣からこれまで16年間で32人の文部・文部科学大臣をウオッチしてきたつもりだが、政策面でほとんど印象に残る人はいなかった。「記者の目」の記事に感想のはがきを自宅にもらった瀬戸山三男さん、文部省の中学校課長時代から知っている遠山敦子さん、社会部記者嫌いを公言して手こずらせた森善朗さん、初対面のあいさつで「いやー、私も毎日新聞の禄(給与)を食んでいたのですよ」と言った大島理森さんら個人的印象ばかりが残る。唯一、中学校から業者テストを追放しようというキャンペーンに同調してくれた鳩山邦夫さん、その方針を引き継いでくれた森山真弓さんが政策がらみで思い出すぐらいに過ぎない。
私が見てきた文部・文科大臣の在任平均が半年では政策に腕の振るいようもなかったのだろう。結局は官僚任せの文教h行政になりがちで、国民の民意が反映される機会に乏しい状態が続くことになる。大臣エレジーは結局国民の損ではないかと思わせられた勉強会だった。
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