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2006年11 月17日 (金)

履修科目負担減は受験生への媚だ;毎日記者の目

 毎日新聞盛岡支局の林哲平記者は17日朝刊記者の目で<履修不足・高校4割の岩手で思う/負担減「受験生へのこび」/諸君 何のため学ぶか>と主張した。

熊本を除く46都道府県で発覚した高校の履修単位不足問題で岩手での該当校の比率は全国トップクラスだった。記者はこの主因は「受験後進県」と言われる岩手の事情だと最初は考えた。予備校によるセンター試験の自己採点調査で岩手は7科目総合47位、つまりどんじり。予備校が少なく今の大学受験体制の中では後進県にならざるを得ない。だから、必修科目でも履修せず、受験科目の勉強に集中せざるを得なかったのだろうと思っていた。

しかし、現場を歩いて生徒たちの姿を見、学校長たちの声を聞いていくうちに何かが違うぞ、と思い出す。「誤るだけじゃすまない」と校長に怒りの声を上げる生徒、「おかしいと思っても生徒の人生設計を考え、ニーズに応えるのも仕事」と言う校長。取材を重ねた結果、記者は「この問題の一番の原因は『子どもへのこび』にあるのではないか」と思い至った。「何を学ばせることが必要か」の議論を欠いた大人の表面的な「子どものために」という思いが幅を利かせてしまっていないかーーそう考える記者は「受験生であることが免罪符になるわけではない」と言い切る。その上で「何のために学ぶのか。自分たちが当事者となった問題を通じてくみ取れることは多いはずだ」と高校生に呼びかけている。

<谷口のコメント>

◎全国の高校でこの「記者の目」を音読させよ◎
 公明党の無節操な人気取り体質と文科省の弱腰で、高校の履修逃れ問題の事後処理は極めて非教育的な経過をたどった。与党が決めた「救済策」と称するものが70時間やればいいのか50時間でいいのか、分かりにくいのと、今度の騒ぎが良いことなのか悪いことなのか高校生にきちんと教えようとする構えが欠けていて「実にいい加減決着」の印象を強めている。しかもいまだに責任の所在もあいまいだ。高校生たちへの悪影響は計り知れない。

こうした中で林記者の「記者の目」は言わなくてはいけないことをきちんと言ってくれた記事である。論旨は極めて常識的な線だ。しかし、渦中の現場を走り回り、その中で考えた説得力を持っている。「どうしてくれる」と校長に詰め寄るガキどもには大人がガツンと言ってやる必要がある。それを言ってくれて胸のつかえが降りた気分だ。「記者の目」はもう数十年も続く毎日の人気コラムだが、当たり前のことを当たり前に言うことの大事さを思った。写真から見て記者は30台半ばぐらいか? 全国の高校である朝の10分間、生徒にこの記事を音読させて世間の目と言うものを教えてはどうだろうか。

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