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2006年6 月 1日 (木)

提案:「書く」教育を強化しよう

「十代読者への新たなアプローチの考察」―日本新聞協会の機関誌「新聞研究」5月号に書いた拙稿のタイトルです。副題があってー「毎日中学生新聞」から学 ぶものー。この3月で56年余の歴史を閉じたわが国唯一の中学生向け日刊紙「毎日中学生新聞」(毎中)の消滅から新聞界は何を学ぶべきか、そんな思いを込 めた小論です。その中で児童生徒の間で進む「不読者化」の問題に多く言及しましたが、その流れを止めるにはどうすればいいのか考えてみました。

 ◎この10年に急増する不読者化◎
毎 日新聞社は1947年から読書世論調査を続けています。54年からは全国図書館協議会と共に学校読書調査も毎年実施してきました。子どもたちについては書 籍と雑誌に分けて調べていますが、雑誌を例に取ると「(調査期間の)1カ月に1冊も雑誌を読まなかった児童生徒の割合」(不読者の率)は最新の05年調査 で中学生29.1%、高校生31.5%と3人に1人に近い高率となっています。小学生はいくらか低いものの24%と4人に1人が全く読まないという活字離 れの状況に変わりはありません。
不読化はこの10年間で急激に進みました。中学生を例に取ると95年(9.6%)から05年(29.1%)へ3倍 にもなっています。小学生、高校生も同じ傾向です。テレビやこの10年間に普及したインターネットの影響が考えられます。また、携帯電話を持つ子どもが増 えてお小遣いが電話代に回り、雑誌を買う余裕がなくなったのでは、という分析もされています。しかし、本当にそういうことが主因なのでしょうか。

 ◎読書タイムだけでは止められない不読化の波◎
実 は雑誌だけでなく本(書籍)も不読率はずいぶん高かったのですが、学校が朝の読書タイムを設けて取り組むなど努力した結果ずいぶん下がりました。中学生の 本の不読率は95年には46,7%もありましたが教育の力で減り続け、04年には18.8%まで下がりました。ところが05年は24.6%に急騰しまし た。高校生も前年より8.1ポイント上がって50.7%と再び上昇に転じたのが不気味です。

 この反転について「読めといわれるからでな く、主体的に楽しく読むようになることが求められるのではないか」との指摘がされています。時間も決められ目の前に本もあるから目を通すが、そういう枠が なくなったらとたんに本から離れてしまう、こんな状況があるのではないかと言うのです。学校がフォローしてきた本でさえこのありさまですから、いわんや雑 誌は、ということでしょうか。
では、新聞はどうなのか。04年調査によると中学生の新聞閲読率は毎日読む(30.6%)、時々読む(39.8%) 併せて70%を超える高率でした。ただ、最も興味のある欄を3つ上げさせると最高はラ・テ欄の73%でしたから「読む」中身ははなはだ心もとないものがあ ります。ある新聞教育のベテラン教諭は「実際には『読む』という意味合いで日常的に新聞に接している中学生は数%、一桁の範囲でしょう。3年生になると受 験の面接対策で10%ほどにはなるのですが」と苦笑しました。ここでも新聞に主体的に向かう気持ちの育成が必要だと言えるのではないでしょうか。

 ◎書くことを重視した国語教育を◎
  本や新聞に主体的に係わる、と言ってもはなはだ抽象的ですが、主体的に係わるためには、私は今後の国語教育はもっと書くことに力を入れる必要があると思っ ています。作文教育の強化です。自分の頭で考え、まとめ、自分の言葉で文章にする、こうした訓練を通じて本へのより深い関心が生まれてくるのではないで しょうか。学力低下論議を受けて中教審は次期学習指導要領改訂の中心を国語教育の強化に置く方向と伝えられます。ある文部省幹部は「教科としての国語とい う意味でなく全般の国語力の低下が学力の低下につながっているのではないか。次期改訂は国語の力強化に向かうだろう」と解説してくれました。私もその方向 に賛成ですが、特に作文に時間を割くようなカリキュラム作りが大事だと思います。

 ◎新聞作りの普及に努力を◎
 新聞教育は もっと「新聞作り」教育に力を入れるべきだと思います。学級新聞でも学校新聞でも、児童生徒が自分たちで新聞を作っていく中で新聞とは何か、世の中(学 校、学級でもいいですが)のためにどういう取材、編集がためになるのかを学んで行き、ひいては本物の新聞により強く興味関心を持ってくれるのではないで しょうか。

 私は新聞研究の小論を書きながら、毎日中学生新聞と新聞作り教育が戦後民主教育のスタートという同じ時代背景から生まれて きたことを改めて学びました。GHQ(連合国軍総司令部)主導で押し進められた教育民主化は新制中学校の制度化(47年)、社会科の創設と並んで新聞づく り教育の普及も柱でした。GHQの指令を受けて山奥の学校にも「学校新聞つくり」が校務分掌として浸透して行きました。

 その中心人物 となったのがGHQ新聞課長、D・C・インボデン氏ですが、1949年(昭和24年)11月16日の毎中創刊号1面にインボデン氏のメッセージが掲載され ているのは時代の雰囲気をよく表していると思います。毎中はGHQの押し付けとはいえ新生中学校で盛んになる新聞作り教育の上に花開いたのでした。
新聞を読むことを中心にしたNIE教育の効果を疑うものではありませんが、より時間と労力を傾けることが可能な体制ができるなら、もっと新聞作り教育に振り向けていただければありがたいと思います。

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コメント

今回の日中対決、大変興味深く拝見致しました。
私も小さい頃から書道を習ってきたので、藤本さんの字の素晴らしさも、中国のチャンさんの字の素晴らしさも、良く分かりましたが、藤本さんの字は彼女の人柄の様にとても素直でとても上手で、感動しました。
中国で投票することに意味があったのかもしれませんが、日本で投票していたら結果も違っていたのではないかと思います。

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