生徒の目を観る;都立高校訪問Ⅱ
JR国立駅からバスで10分の都立高校を再度訪問した。3年前、高校教育に新設された情報科の授業がいまいち飲み込めないので改めて参観に行ったのだ。
午後2時5分からの6時限目が始まる20分ほど前に着く。5時間目の真っ最中だが、例の広い中央廊下で数人の女生徒が談笑していたり男の子がぶらぶらしていたりする。前回は遅出の生徒に驚いて尋ねたのだが要領を得なかった。今日いろいろ聞いて分かったのだが、つまり今の高校は部分的に大学に似てきているらしい。つまり生徒の時間割が必ずしも一様ではないのだ。その時間は空いている子がいても不思議ではない。
「そうなんですよ。学校参観のときなどぶらぶら生徒のことを説明しないと不思議に思われるんですよ」と情報科の先生。その先生は先日の「記者日記」(5月31日付け)を読んでくれていて「ずいぶんきちんとした生徒たちのように書いていただいちゃって」と礼を述べられた。「いやそうではありませんよ。高校はそれほど数は見てないですが、ちゃんとそれなりの目で判断してますから」と教育記者のキャリアをそれとなく強調しながらあの日の合宿のことを思い出していた。
1年A組の女生徒50数人がひしめくバス車中で身を縮めながら見た生徒たちの目が今でも忘れられない。みんな傷ついた動物のような悲しく、あるいは挑戦的な目の色をしていた。城西地区にある私立女子高校が行った2泊3日の八ヶ岳合宿オリエンテーションの同行取材。2日目の勉強会でアルファベット26文字を書こうという問題が出たとき、「a b c」と書いてペンが止まってしまった子がいた。「どうしたの?」と問いかけたときのひと言も答えなかったあの悲しげな目が今もまぶたに焼き付いている。なぜabcで止まったのか、あの目は何を言いたかったのか、反抗したかったのか。丸2日かけてその女生徒をマークしてようやく聞きだしたのは付き添いの先生が予測した通り「中学校で教わらなかった」という話だった。
「区立中学校はこういう子たちをまるでお客様のまま送り出してくるのですよ。私たちが引き受けなくて誰が引き受けるのですか」。その学校が定員の4倍も生徒を入れているという記事を自分が書いたために都の補助金が全額停止となった。億近い金額だ。事実は事実だから書かれたことに文句はないが、ともかく生徒を見て欲しい、という学校側の要請に応えての同行取材だった。そういう背景のある取材だったが、それ以来学校現場に行くと子どもたちの目の奥を覗き込むクセがついた。
いうわけでこの都立高校でも生徒に話しかけながら目の色を観察していたが、どの子も実に澄んだいい目をしている。真正面から返ってくる素直なまなざしは家庭で親子の関係がうまくいっていることをしめしている。自分の親よりも一回りも上のオッサンと話す際に、親との関係がきちんとできていないと尋常な応対ができない。特にそれは女子生徒に顕著に現れる。今どきの16,17歳だからいろいろな面はあるだろうが根が健全であるのは目で分かる。
帰りのバス停。女子生徒3人が紙切れをみながらワイワイ。「どれどれ」と覗き込むと中間考査の成績一覧だった。「すごいじゃないか。437人の学年で8番か」。「違いますよ。437点でクラスで8番」。キャー、キャーとひとしきりかまびすしかったが、素直な娘たちに楽しい気分だった。
午後2時5分からの6時限目が始まる20分ほど前に着く。5時間目の真っ最中だが、例の広い中央廊下で数人の女生徒が談笑していたり男の子がぶらぶらしていたりする。前回は遅出の生徒に驚いて尋ねたのだが要領を得なかった。今日いろいろ聞いて分かったのだが、つまり今の高校は部分的に大学に似てきているらしい。つまり生徒の時間割が必ずしも一様ではないのだ。その時間は空いている子がいても不思議ではない。
「そうなんですよ。学校参観のときなどぶらぶら生徒のことを説明しないと不思議に思われるんですよ」と情報科の先生。その先生は先日の「記者日記」(5月31日付け)を読んでくれていて「ずいぶんきちんとした生徒たちのように書いていただいちゃって」と礼を述べられた。「いやそうではありませんよ。高校はそれほど数は見てないですが、ちゃんとそれなりの目で判断してますから」と教育記者のキャリアをそれとなく強調しながらあの日の合宿のことを思い出していた。
1年A組の女生徒50数人がひしめくバス車中で身を縮めながら見た生徒たちの目が今でも忘れられない。みんな傷ついた動物のような悲しく、あるいは挑戦的な目の色をしていた。城西地区にある私立女子高校が行った2泊3日の八ヶ岳合宿オリエンテーションの同行取材。2日目の勉強会でアルファベット26文字を書こうという問題が出たとき、「a b c」と書いてペンが止まってしまった子がいた。「どうしたの?」と問いかけたときのひと言も答えなかったあの悲しげな目が今もまぶたに焼き付いている。なぜabcで止まったのか、あの目は何を言いたかったのか、反抗したかったのか。丸2日かけてその女生徒をマークしてようやく聞きだしたのは付き添いの先生が予測した通り「中学校で教わらなかった」という話だった。
「区立中学校はこういう子たちをまるでお客様のまま送り出してくるのですよ。私たちが引き受けなくて誰が引き受けるのですか」。その学校が定員の4倍も生徒を入れているという記事を自分が書いたために都の補助金が全額停止となった。億近い金額だ。事実は事実だから書かれたことに文句はないが、ともかく生徒を見て欲しい、という学校側の要請に応えての同行取材だった。そういう背景のある取材だったが、それ以来学校現場に行くと子どもたちの目の奥を覗き込むクセがついた。
いうわけでこの都立高校でも生徒に話しかけながら目の色を観察していたが、どの子も実に澄んだいい目をしている。真正面から返ってくる素直なまなざしは家庭で親子の関係がうまくいっていることをしめしている。自分の親よりも一回りも上のオッサンと話す際に、親との関係がきちんとできていないと尋常な応対ができない。特にそれは女子生徒に顕著に現れる。今どきの16,17歳だからいろいろな面はあるだろうが根が健全であるのは目で分かる。
帰りのバス停。女子生徒3人が紙切れをみながらワイワイ。「どれどれ」と覗き込むと中間考査の成績一覧だった。「すごいじゃないか。437人の学年で8番か」。「違いますよ。437点でクラスで8番」。キャー、キャーとひとしきりかまびすしかったが、素直な娘たちに楽しい気分だった。
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