夢見る力
「宝船」に乗って
歳末に知人から「お宝」を2枚いただいた。宝船の絵が描かれた紙である。1月2日これを枕の下に敷いて寝ると良い夢が見られるそうだ。江戸の中期ころから2日の宵になると「お宝~、お宝~ 」の売り声が街に流れたという。東京・浅草のれん会が買い物客や観光客に配っていたのを知人が手に入れておすそ分けしてくれたのだ。
色刷りの「お宝」には一首の短歌が書かれている。
長き夜の 疾うの眠りの 皆目覚め 波乗り船の 音の佳きかな
ひらがなが振られていて
ながきよのとおのねふりのみなめさめなみのりふねのおとのよきかな
となる。つまり、前から読んでも後ろから読んでも同じ言葉になる回文なのだ。江戸っ子のしゃれっ気も混じっている遊びの様でもある。それにしても、これだけ悲観的なことばかり続くご時勢だから、2日の夜は物は試しと枕の下に敷いてみよう。
と 、思っていたら元日の毎日新聞1面の余禄が「宝船」を題材に書いていた。民俗学者の折口信夫の説を引いて、この習俗の由来を紹介。その上で「人々の心を引きつけ、すくんだ足を前のめりに踏み出させる夢のほしい今年である」と続ける。そして「そこは吉夢を見るのに手を尽くしたご先祖を持つ日本人ではないか。『夢見る力』はきっと取り戻せる」と結んだ。
「夢見る力」は言い得て妙な言葉である。加齢のせいもあってか夢見る力のとんと衰えている当方としては、「お宝」をサプリメントに力の回復を図ってみよう。いい夢を見て、それが正夢になることを願いつつ。
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