シリーズ・書写を考える<4>
序章「中国に書写を問う 安徽省師弟旅」その4
テレビ企画「日本・中国書道対決」の日本側代表、都立拝島高校3年、藤本梨絵さん(2006年毎日学生書写書道展チャンピオン)に付き添って番組収録を終えた日本書写能力検定委員会の渡邉啓子師範は24日午後11時半、関空に無事帰り着いた。2泊3日のハードスケジュールだったが、日本と中国の生徒が書で対決するという場面を通じて得たのは「日本の書写が中国で受け入れる傾向が強まっている」という感触だったという。本番対決の模様は2月11日(日)午後8時から日本テレビで放映される。
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◎「書写は素晴らしい」
藤本さんの作品を激賞した中国の書家◎
――徽州師範学校が対決の舞台でしたね。向こうの書の専門家は藤本梨絵さんの書写を見てどんな感想を漏らしてましたか。
渡邉師範 内容は番組で見ていただきたいのですが、とても注目されました。呉さんという40過ぎの男の先生は藤本梨絵さんの字を見て「文字というものには好みがあるが、これは大変に素晴らしい。とても上手だ」と私に言いました。私どもの過去の交流でも日本の書写を知らない土地ではなかなかこうした反応はなくて、蘇州市のように交流を重ねていくと、書写の良さを分かってもらい「日本の書写に学ぼう」(蘇州市幹部)とまで言ってくださるのですが。
――地元の反応はどうでしたか
渡邉師範 とても話題になっているようで私まで地元のテレビ局に取材されました。「日本は中国から漢字というものをいただいて今日の文化がある。書の字体には日中それぞれに良さがある」というコメントをさせていただきました。
――徽州師範学校では学生の書道の自習時間も見学したのですね。
渡邉師範 はい。日本の教室より一回りほど小さめの部屋で30人ほどの男女の学生が毛筆の練習をしていました。過去の交流でもいつも目にすることなのですが、中国の人は高机に紙を広げて立ったまま書くんですよ。座るという生活習慣がないところからきているのでしょうか。
――小中学校の教育は簡体字で行われていると聞きましたが、師範学校の学生たちは先生になった後で、毛筆を教えることはないのですか。
渡邉師範 学生たちはペンなど硬筆の練習もするのだそうです。でも、教師になってから毛筆や硬筆を子どもたちにどう教えるのか、その辺の事情がよく分かりませんでした。通訳の人に質問の趣旨を説明するのもなかなかもどかしくて。今後の勉強にさせていただきます。
◎すさまじいネット社会ぶり◎
――中国はネット社会も急速に発展していると聞きますが、何か印象に残ったことはありますか。
渡邉師範 車での移動途中にある田舎の町でトイレ休憩のためスーパーマーケットに立ち寄ったのです。そこの地下が広いネットカフエのようになっていいてパソコンが100台以上もあるのです。平日の夕方でしたが若者がいっぱい集まっていました。ゲームをやったりドラマを見たりしている人が多かったですね。
――帰りは上海から関空まで3時間。上海及び中国の印象はどうでしたか。
渡邉師範 上海はいつも素通りになってしまって。昨年3月に個人的に蘇州市へ旅行したときも通りました。上海から蘇州までは高速で1時間少々。そのときは過去の交流を通して知り合った人たち30人ほどと会いました。呉先生はじめ今回お会いした方々とも交流を深めていきたいと思いました。
美術工芸品としても愛される書道具
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