「いじめある」4割――衝撃の調査結果に全校が立ち上がる;酒田市立平田中
~学校新聞「平中タイムス」がキャンペーン~
「あなたの周りで『いじめ』と思われることはありませんか?」。秋田県酒田市立平田中学校の学校新聞「平中タイムス」が校内でこんなアンケートをしたところ、なんと4割もの生徒が「ある」と答えた。ショッキングな結果に同校では全校でいじめについて考える時間が持たれ、平中タイムスは続刊で「緊急特集・いじめ撲滅」を組んだ。
同紙が「いじめ」調査を行ったのは昨年秋、全国でいじめ自殺が大きな社会問題となったころだった。「あなたの周りで『いじめ』と思われることはありませんか」との質問に1年生は37%、2年生40%、3年生36%が「ある」と答えた。「わからない」という答えも1年生32%、2年生44%、3年生29%に上った。「ある」と答えた75人に「それはどんないじめですか」と質問したところ51人が「陰口・悪口・からかいなど言葉の暴力」、18人が「無視や仲間はずれ」を挙げた。6人は「その他」に分類された。
「平中タイムス」は昨年11月27日号でこの結果を伝え、アンケートを通じて集まった生徒たちの熱い思いを<自分がいる 友達がいる そして 生きている>の見出しで特集した。自由記述も紹介され「最低なことだ。でも反発できない。反発すると、もっとひどいことになることを知っているから」(2年生)など生徒の本音が並んだ。
この記事をきっかけに全校で「いじめを考える」時間が設けられ、どのクラスも改めて同紙を読み、考え、もう一度意見をみんなが書いたという。同紙は次号の同12月14日号で再び見開きの「緊急特集・いじめ撲滅」を展開した。
特集には「情けない」と怒りの声が満ちあふれ「自分はこうしたよ」という体験談も掲載された。「これだけ思いやりのある学校なので、解決できない問題はない」(3年、石黒亘君)など多くの生徒が強い決意を表明している。
「こんなときあなたならどうする?実際に身のまわりで起こりそうな三つの問題について考えてもらいました」というコーナーでは①いつも人の悪口を言ってしまうA君へのアドバイス②友人から「あいつむかつくよな」と同意を求められたときの対応③からかわれ,いやなことをされて落ち込んでいる友人へのアドバイス、について生徒たちの考えを載せている。「良いところを見ようよ」「自分の心を汚してしまう」「私がいるよ そう言いたい」「いじめリーダーつくらないない」「勇気を出そう それが友達」などの見出しから、生徒たちの精一杯の思いが伝わってくる。
新聞部のインタビューを受けた校長先生は「驚きました。でも正直に答えてくれて良かったです」と率直に回答。「まず誰かに話してほしい」と訴えた。
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<谷口のコメント>
◎志の高さが生んだ秀逸キャンペーン◎
平中タイムス(月刊)は全国の中学校の学校新聞で最高峰にある新聞だ。全国小・中学校PTA新聞コンクール」(毎日新聞社、全国新聞教育研究協議会共催)で昨年、一昨年の2年連続、内閣総理大臣賞を受賞している。顧問の出嶋睦子先生からこのほど届いた夏以降の新聞を読み進めるうちこのキャンペーンを知って瞠目、発刊からやや時間は経っているが取り上げた。調査総数や実施月日に触れていないなど課題はあるが、質問もフォロー紙面もよくできている。何よりも読んでいて気持ちがいいのは新聞を作る心の熱さが紙面から伝わってくることだ。また、生徒の実名がふんだんに登場することも信頼感を高めている。
平中タイムスを読んでいていつも思うのは、その志しの高さだ。本来、14歳前後の中学生たちは夢と理想と正義感にあふれる世代のはず。その彼らが新聞と言う媒体を使って「学校直し」に乗り出すとき、仲間たちの信頼を集めないはずがない。それが驚愕の調査結果と秀逸のキャンペーンに結びついたのではなかろうか。
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