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2006年5 月18日 (木)

近藤信司文部科学審議官

Photo_3 教育基本法改正案論議が国会で始まった。憲法改正に次ぐ重みを持つ、と政治的な重要性が強調される一方で「それで教育がよくなるの?」と国民の関心は今ひとつだ。実際の教育行政を担う文科省の責任者、近藤信司文部科学審議官に行政側の言い分をまずは聞いてみた。
(インタビューは06年4月20日、文科省内で行った。その後政府は同29日、教育基本法改正案を国会に提出、文科省は同省ホームページに法案特集ページを立ち上げた)

―これからの文教行政の懸案は何ですか
近 藤 教育基本法の改正です。憲法と同じように昭和22年(1947年)にできて以来一度も改正されたことがありません。平成15年(2003年)に中教審 から改正するべしという答申を受けてから3年。この4月13日に与党協議会で意見がまとまりました。政府としてこれから改正の作業を進めていく段階になり ました。

―いよいよ文科省の出番ということですが、文科省としてはすでに検討作業はしてきたわけですね。
近藤 省の中では試験的にいろいろ検討作業はしてきましたが、これからは答申を最大限に尊重して改正の作業を進めていくことになります。
―大変な作業になりますか。
近藤 教育基本法はそう長い条文ではありません。理念法ですから。しかし、昭和22年にできた法律ですから新しく付け加えるべき理念というものもあります。例えば、中教審答申でも指摘されている生涯教育などがそうです。

― 国民の中には教育基本法が変わっても教育が良くなるの?という冷めた声があります。
近 藤 基本法というのは理念法ですからそう見えるのですね。新しい理念をまず明確にして其の後に具体的な施策に反映させていきます。学校教育法や学習指導要 領などに反映していくわけです。また、与党協議では教育振興基本計画を策定するという条文も入っています。こうしたことをトータルでやっていくわけです。 そして学力の問題とか不登校の問題とかが次のステップに来るわけです。まさにその第一歩を踏み出すということです。ただ、改革を担うのは教員であり学校、 地域です。それらの連携が必要です。大きな議論が巻き起こってほしいと思っています。

―大きな改革ですが国民にはまだよく分かっていません。
近藤 与党の協議も言葉だけが独り歩きしないようにというような配慮から必ずしもオープンにしてこなかったから伝わらなかった部分があるかもしれません。

―文科省としてはそこのところをどうしますか
近 藤 国会で論議されるようになれば関心も高くなると思いますが、文科省の段階でも課題の中身を国民に分かりやすく説明する努力をしていきたい。これはは理 念法であり改正ができたら次は何をやるのか、学力は、子どもの非行はどう防ぐのかなど次のステップを考えていくことをよく説明して改革を一緒に考えてもら うように関心を高めて行きたいと思います。

―改正の具体的な内容は
近藤 義務教育って何だ、ということをはっきりさせる必要があ ります。幼児教育をどうして行くのか、幼児教育に金がかかり過ぎるという問題もありますね。こうした議論をこれからやっていかなくてはいけません。与党協 議でも指摘されたことですが、義務教育の目標を明確にしていく必要があります。そして高校のあり方をどう考えるか。高校の位置付けがよく分かりませんね。 実際には97%の子どもたちが進学しているのですが。大学への準備教育なのか職業教育なのか。一般教養としての部分もありますね。それに現在の基本法は義 務教育の年限は9年と書いているのですが、年限は基本法では書かず法で定めようというのが与党協議の方向ですね。(文科省として)当面義務教育9年を変え る方向にはないけれども将来的には10年にするとか、6歳から下に下げていくことを議論していく必要があります。与党協議でもこうしたテーマがいろいろに 話し合われました。愛国心だけがクローズアップされていますがそうではありません。

―愛国心についての与党協議を文科省としてはどう受け止めていますか。
近藤 学習指導要領の中に「郷土や国を愛する心を養う」ということはすでに入っていますから特に抵抗感はなかったですね。
―学習指導要領の改訂が取りざたされていますが。
近 藤 ゆとり教育批判が手抜き批判的なイメージで語られるのは残念です。確かに「ゆとりと充実」を目指す中で「充実」が抜けてしまった面はあるのでしょう が。いずれにしろ指導要領はほぼ10年置きに改訂してきており18年度中にも改訂をする方向です。これは授業時間数など保護者の方にも関心の深い問題です ね。
―教育基本法の改正と密接にからむ改訂になりますね。
近藤 まさにそうですね。

―総合的な学習の時間を見直す動きがありますが。
近 藤 総合的な学習の時間はすばらしい1つの分野だと思います。ある意味で学校の裁量に任せるものとして国が一律に「こうしなさい」とは言いませんでした。 現実にはすごく素晴らしい取り組みもあったしそうでない授業があったのも事実。支援体制や授業時数をどうするか、などが課題としてあります。

<プロフイル>
東京都出身、58歳。昭和46年文部省入省。昭和54年から2年間、岡山県教育委員会で文化課長を務めた以外は虎の門の本省暮らし。初中局小学校課長、高 等教育局大学課長、大臣官房総務課長などを歴任。平成12年大臣官房長、12年生涯学習政策局長、15年初中局長を経て16年から現職。科技庁と合併した 文科省内で旧文部官僚のトップの位置にいる。

 

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