2009年4 月10日 (金)

公立小中全校に電子黒板配備へ

 学校ICT化に4000億円

  政府の15兆円に上る追加経済対策の一環として、文部科学省は9日、電子黒板を全国の公立小中学校に1台ずつ配備する方針を決めた(10日毎日朝刊2面)。電子黒板はパソコン連動の黒板で、デジタル教材などを黒板画面に映し出し、画面に触れることで操作できる。テレビの天気予報で、お天気キャスターが操作している画面を思い出せばいいようだ。1台45万円。このほか、コンピュータの台数を増やすなど、学校ICT(情報通信技術)化推進に約4000億円を宛てるという。このほか、新学習指導要領の実施に合わせ、小学校教員約2万3000人の英語研修(約10億円)なども含まれている。
<谷口のコメント>

単なるばら撒きにするな
 3年ほど前、静岡県内の公立小学校を訪問した際、白い布を掛けたままの電子黒板があった。あるパソコン関連コンクールで入賞した賞品だが、使いこなす先生がいないのでしまってある状態、と言う。学校ICT化の推進は賛成だが、景気浮揚のためのばら撒きにならないよう、人(先生)を育てることが肝要だ。

2008年9 月11日 (木)

大阪府知事が投じた学テ成績公開論が波紋

教委をクソ呼ばわり
 大阪府の橋下徹知事が「くそ教育委員会」と品のない言い方で罵倒しながら大阪府内の市町村教委に先の全国学力テストの成績公開を迫ったことが波紋を呼んでいる。11日朝日朝刊が「学力調査公開論が波紋/橋下知事口火切る/現場「序列化招く」/国、自主公表は容認」とこの間の経緯と全国の動きをまとめた<3面>。
 
 8月末に発表された2回目の文科省全国学力テスト結果について、市町村教委にそれぞれの成績を発表させたい橋下知事は府教委に指導を求めたがを府教委は動かず、恫喝ともいえる口調で批判を続けた。「公表しない市町村教委は責任放棄だ。徹底的に批判する」「公表しないなら府教委は解散する」「公表、非公表は(市町村教委に)予算をつける重要な指標」などが知事語録。あげくに7日のラジオ公開生放送で「クソ教育委員会」の」発言まで飛び出した。
 たまりかねた府教委は10日、府内の43市町村教委の教育長らを集め、それぞれの平均正答率を公表するよう要請したが、約1時間半の会議では教育長らから反発の声が相次いだという。一方、全国的には秋田県、鳥取県の知事らが公表に前向きな発言をしているという。これに対し文科省は「都道府県は市町村名を明らかにした結果の公表はしないのが決まり」と、当初のルール変更の意志はないことを表明している。個別の動きで注目されるのは宇都宮市。市内の全小中学校のうち、小規模学校2校を除く全校がれぞれのホームページに成績を」掲載している。

<谷口のコメント>

教育委員会って何だ?
 このニュースには考えるべき2つの要素が含まれている。学テ成績の公表範囲。、もう1つは首長と教委の関係だ。学テの公開問題は別の機会のテーマにするとして、興味を引かれるのは馬鹿丸出しともいえる橋下大阪府知事の発言だ。独立行政委員会としての教育委員会のあり方を無視した発言は、府政のトップに立つ者として極めて不適切な言発と言わなくてはいけない。背景には、教委の独立性が中途半端になっている制度的な問題点もあるだろう。しかし、今回のことで一番気になるのは、府民がどのような反応を示すか、ということだ。多くの府民が「クソ教育委員会」という知事発言に「そうだ」と拍手しているのではないか。タレント知事がそのあたりの市民感情をつかんで演じているのが学テ公開論議ではなかろうか。恫喝に屈することなく、各市町村教育委員長が反対談話を公表するところから騒ぎの第2幕を始めてほしい。独立性を隠れ蓑に何にも責任ある行動をしてこなかった教委に市民はうんざりしているのだから。

2008年8 月19日 (火)

校長・教頭任用標準試験始まる

  透明性の確保が課題
 鹿児島県で18日、校長、教頭になるための任用標準試験が始まり、この日は478人が小論文試験に臨んだ(毎日・鹿児島版)。19、20日に面接があり、10月中旬に結果が発表される。大分県教委の教員人事をめぐる汚職事件が教育界に大きな衝撃を与える中での試験。鹿児島県教委職員課は「筆記試験は氏名を記さず、面接試験はPTAや民間企業など外部からも面接官を入れている。透明性は確保しており、不正は考えられない」としている。
谷口のコメント
 改まるか?「先生の世界も金・コネ次第」
 この時期、各地の都道府県教委で一斉に管理職試験が行われる。先生の採用や教頭・校長への管理職登用などの教員人事が不正に左右されているという疑惑は大昔からつき物だった。大分の例はそれをはからずも実証して見せたわけで、教育界に与えた損失はあまりにも大きい。誰もが「氷山の一角」と思ったに違いない。点数を改ざんするという荒業がまかり通るようでは手の打ちようがないが、背景に教員の世界にコネが蔓延しているという実態があるのは間違いない。それが点数改ざんを許す良心の麻痺につながっていく。コネが一概に悪いとは言い切れない、という意見も分からないではないが、やはりここは一律コネ追放でいかなくては教育界の名誉回復はないだろう。
  

2008年1 月 5日 (土)

新築移転7年で廃校;群馬県長野原町小学校

モダン校舎建設12億円のムダ!?
 02年に新築移転したばかりの群馬県長野原町立第一小学校(児童数31人)が来春で廃校となる。12億円投じた新校舎も7年でフイになるわけで無駄遣いが問題になっている(4日毎日朝刊社会面)。

古い同小学校は15年完成予定の八ッ場(やんば)ダム水没予定地にあったため、約1.5キロ北西の高台に移転した。しかし、地区の住民流出が続き、児童数が02年当初の52人から減り続け、来春は23人になる見通し。「このままでは教育環境として好ましくない」と町当局が別の小学校との統合を決めた。3階建ての本校舎、2階建ての体育館兼屋内プールを備えた同小学校建設費約12億円のうち8億円は町の資金、2億4000万円が文科省の補助、1億5600万円が水源地域整備事業交付金だ。

水没予定地に住む住民が近くに用意される代替地に移住せず、町外に出てしまうために子供の数が減ったためだが、住民の流失はダム工事の遅れや代替地整備の遅れが原因とする指摘もある。

<谷口のコメント>
◎水源の村の悲劇は都市住民にも無縁ではない◎
 利根川上流の水系は東京の水甕だ。大都市に供給する水確保のために多くのダムが群馬県内にある。このダムも治水と利水を兼ねた多目的ダムとして建設される。完成予定は当初より15年も延びている。住民の強い反対運動もあった。近代的な小学校建設もそうした状況を背景に行われたのだろうが、写真で学校を見る限り、確かに児童数20人足らずでは器が大き過ぎて、いかにも異様な感じだといわざるを得ない。ただ、それは新築当初の50人ほどでも同じことが言えそうで、町がどういう意識で建てたのか聞いてみたいとさえ思う。立地確保に惜しげなく注ぎ込まれたこれ見よがしの税金の城、と言えば言い過ぎだろうか。

 それにしても記事では今度はどこの小学区へ通うことになるのかが分からない。土地柄から言って10キロ近くも離れた小学校ではないかという気がするのだが・・・。

2008年1 月 4日 (金)

新築移転7年で廃校;群馬県長野原町小学校

モダン校舎建設12億円のムダ!?
 02年に新築移転したばかりの群馬県長野原町立第一小学校(児童数31人)が来春で廃校となる。12億円投じた新校舎も7年でフイになるわけで無駄遣いが問題になっている(4日毎日朝刊社会面)。

古い同小学校は15年完成予定の八ッ場(やんば)ダム水没予定地にあったため、約1.5キロ北西の高台に移転した。しかし、地区の住民流出が続き、児童数が02年当初の52人から減り続け、来春は23人になる見通し。「このままでは教育環境として好ましくない」と町当局が別の小学校との統合を決めた。3階建ての本校舎、2階建ての体育館兼屋内プールを備えた同小学校建設費約12億円のうち8億円は町の資金、2億4000万円が文科省の補助、1億5600万円が水源地域整備事業交付金だ。

水没予定地に住む住民が近くに用意される代替地に移住せず、町外に出てしまうために子供の数が減ったためだが、住民の流失はダム工事の遅れや代替地整備の遅れが原因とする指摘もある。

<谷口のコメント>
◎水源の村の悲劇は都市住民にも無縁ではない◎
 利根川上流の水系は東京の水甕だ。大都市に供給する水確保のために多くのダムが群馬県内にある。このダムも治水と利水を兼ねた多目的ダムとして建設される。完成予定は当初より15年も延びている。住民の強い反対運動もあった。近代的な小学校建設もそうした状況を背景に行われたのだろうが、写真で学校を見る限り、確かに児童数20人足らずでは器が大き過ぎて、いかにも異様な感じだといわざるを得ない。ただ、それは新築当初の50人ほどでも同じことが言えそうで、町がどういう意識で建てたのか聞いてみたいとさえ思う。立地確保に惜しげなく注ぎ込まれたこれ見よがしの税金の城、と言えば言い過ぎだろうか。

 それにしても記事では今度はどこの小学区へ通うことになるのかが分からない。土地柄から言って10キロ近くも離れた小学校ではないかという気がするのだが・・・。

2008年1 月 2日 (水)

合格認定者は計80人に;文科省高卒認定試験(旧大検)

正月返上で対応する文科省 

 高卒認定試験(旧大検)の採点ミスで合格しているのに不合格扱いされていた受験生は制度開始の05年度から07年度までで計80人となった。文部科学省が元日に発表した。
ミスは「世界史A」の採点プログラムに不具合があったために起きた。世界史A(100点)のうち4問から2問を選んで解答する設問(計6点)がプログラムミスのため加点されず、94点満点の計算になってしまったもので、文科省は、05年度以降の「世界史A」の採点を再度実施。05年度の試験については、解答用紙が破棄されていたため、受験者計8450人全員に12点を加点して合否を判定した。文科省によると、この試験は8-9科目につて各科目40点以上(100点満点)取れば合格となるもので、得点のかさ上げ修正によって合格者が増えた。
 文科省はヘロップデスクを設けて正月返上で対応しており、合格証書を送付するとともに、大学入試センター試験の受験希望の有無などを電話で確認する。 

<谷口のコメント>
◎受験シーズン本番に気になる話だ◎
 今は試験の採点や集計にコンピュータが使われる時代。こんなミスの話を聞くと、コンピュータ頼りの超マンモス試験「大学入試センター試験」は大丈夫かいな、と心配になってくる。
 新聞休刊日の2日、ウエブ版で各紙が「文科省が1日、発表した」と報じているのを読んで記事にあった番号に電話してみると、即座に「はい担当へロプデスクです」と応答が返ってきた。取材と断っていろいろ質問してみて、文科省もそれなりに反省してできる限りの措置を取ろうとしていることは伝わってきた。
 それにしても、さすがにウエブ時代。1日付で報道各社に電話やFAXで情報を流したと言い、それが配信されてかなりの人数の問い合わせがあるのだという。

2008年1 月 1日 (火)

危機的段階に入る地球温暖化をどう教えるか;元日紙面から

 すでにエコ問題はウオーズだ

 各紙とも本紙、別刷り特集を通じて教育関連の記事がほとんど見当たらないのが昨年と大きく様変わりしている。本当の意味で教育改革を進めるにはむしろ落ち着いたいい環境ではないだろうか。

記事で目立ったのは地球環境問題。中でも温暖化の問題が大きく取り上げられている。特に際立ったイベントが予定されているわけではないことを考えれば、温暖化がいかに現実的な危機として迫ってきているかということの現われだろう。

朝日は1面トップで<環境元年/第1部エコ・ウオーズ>の1回目を掲載した。地球環境問題はすでに戦争(ウオーズ)だ、ということだろう。<怒る天 人に牙/温暖化の脅威 急加速>の大見出しが踊る。毎日はやはり1面で<暖かな破局 第2部・地球からの警告>をツートップ扱いの2番手で載せた。<氷が消えれば私たちも/植村さん踏破「冒険の舞台」姿変え>は北極圏に記者を派遣して極地の異変を報じている。読売は大型企画こそなかったが、対社面で<日本の川 今世紀にサケ消える!?/オホーツク温暖化 回遊ルートに異変/北大試算>のショッキングな記事を扱った。

子供たちに危機を教えよう

記事の詳細は省くが、いずれも地球環境が壊滅的な危機に向かって進んでいる現実的な証拠をリポートする内容で、「ポイント オブ ノーリターン」(不可逆点)という不吉な言葉が頭に浮かんだ。地球の環境破壊はすでにもう引き返せないところまで進んだということだろうか。あるいはまだ私たちの努力次第で間に合うのだろうか? そのための国際的な枠組みはどう整えればいいのか。私たちはこうした問題点をあらゆる教科を通じて、あるいは特別なカリキュラムを組んで子供たちに教えるべきではないだろうか。後世に地球を受け継ぐ子供たちにはそれを学ぶ権利があるはずはずだ。

2007年10 月28日 (日)

「集団自決」教科書検定、仕切り直し 

 「軍の強制」復活で訂正申請へ;教科書会社 

「沖縄戦での集団自殺はやはり旧日本軍による強制だった、と教科書の記述を訂正する」と、執筆者の1人である高校教師が23日、記者会見して発表した(各紙24日朝刊)。発行元の教科書会社編集者とも合意済みといい、来週中には文科省に訂正申請する方針。文科省は強制ではないとする検定意見を変えていず、処理がどうなるかは不透明だ。 文科省は来春から使う高校日本史の教科書の検定で、沖縄戦での集団自殺は「旧日本軍の強制」によるものとの記述があった5社の教科書の記述を削除させた。これに対し地元沖縄では文科省の教科書検定に反発する大規模な集会が開かれた。これを受けて政府は地元感情に配慮して記述の訂正を認める方向だが、文科省は検定意見を変えていず政治決着の方法は不透明。しかし、来春からの使用に間に合わせるためには11月初めまでに訂正申請するしか方法がないと、この日の記者会見になったという。

  <谷口のコメント>

◎教科書執筆者は学者の良心を持て◎  

沖縄戦での集団自殺に軍の強制があったか、なかったか。真実は一つであるはずなのに、なぜ同じような騒ぎが何度も繰り返されるのだろうか。史実の発掘はどこまで進んでおり、どのような論点が残されているのか。こうした説明が十分国民に説明されないまま、文章の削除、書き換え要求と安易な受け入れなど乱暴なことが繰り返されている。密室性が強い文科省の教科書検定にも問題があるが、教科書会社、それ以上に執筆者に責任はないのか。教科書無償・検定制度の中で文科省にはひたすら弱い教科書会社はともかく、執筆者は自分の学問的信念に従った行動をしてほしい。最初から問題になりそうな箇所は書かない“自粛”執筆も横行していると聞く。この日、あえて記者会見に踏み切った坂本昇教諭には「いまさらながらのスタンドプレー」の批判も出るだろうが、執筆者は彼のように恥を知り、勇気をまずは持て、と言いたい。騒ぎになれば政治決着、のパターンをいつまでも繰り返さないでおこう。

2007年10 月25日 (木)

全国学力テスト結果まとまる

 基礎は合格だが活用問題が苦手

文科省が4月、全国の小学6年生、中学3年生全員を対象に46年ぶりに実施した全国学力・学習状況調査(全国学テ)の結果が23日公表された。テストは計約221万人に対し77億円をかけて行われたもので、国語と算数・数学について身に付けておくべき知識(基礎)を問う問題と知識を実生活に役立てる(活用)問題に分けて実施した。結果は基礎的知識の平均正答率は7~8割と高かったが。活用問題の平均正答率は6~7割にとどまった。全体的には次のようなことが分かった。①基礎的な知識に比べて、活用する力が弱い②全体として都道府県別の差は少ないが、沖縄など一部に低いところがある③就学援助を受けている子供の多い学校の成績が低い傾向がある。また同時実施の生活習慣調査では①家で宿題をするほうが点数が高い②朝食を毎日食べ方が点数が高い、なども分かった。文科省は調査結果を学習指導要領改訂の参考にするほか地方教育委員会と学校にそれぞれが関係する詳細なデータを渡し今後の行政に生かしてもらう方針。また都道府県と政令指定都市に検証改善委員会を設置してもらい、学校支援のプランを作成させることにしている。

<谷口のコメント>

◎成績どん尻の沖縄県対策に即時取り組め◎  

巨費と半年もの時間をかけた割には当たり前のことしか浮かび上がってこなかった。新聞の論調も「そして文科省は何をするのか」(毎日)「これならもういらない」(朝日)と、概して冷たい。しかし文科省が全部やる悉皆(しっかい)調査にこだわったのは何も学校の序列を付けたいためではなく、調査結果をもとにした行政の公平を期したいからだろう。その意味で言うなら、ダントツの最下位が明らかになった沖縄の子供たちの学力向上に文科省も沖縄県教委とともに真剣に取り組んではどうだろう。これだけはっきりした数字がでれば、先生の増員などで少々傾斜的に税金を沖縄につぎ込んでも国民は納得するのではないか。日米安保体制という国益のために沖縄が払っている代償はまことに大きいものがある。沖縄の“低学力”の背景にもそれはないか、その分析調査も学テで沖縄の実態を満天下にさらしてしまった文科省の責任とは言えまいか。

2007年10 月24日 (水)

 教育再生会議が再スタート

年明け最終報告へ

 安倍前首相の肝いりで発足した教育再生会議が23日、首相官邸で福田首相も出席して1カ月ぶりの会合を開いた(各紙)。政権交代してから初めての会合。福田首相はあいさつで「所信表明演説に皆さんの提言を入れた」と、会議の意見を尊重する姿勢を表明したが、改革に対する自身の考え方については「会議が混乱するといけないから言わない」とだけ述べた。この日の会議では小中一貫教育の推進、「教育バウチャー」制度などについて論議が行われた。12月中にも第3次報告のとりまとめを行い年明けに最終報告をまとめる。会合では福田首相が政権公約の柱としている「自立と共生」を議論の指針に加えることも決まった。

 谷口のコメント
◎公開して出直せ◎
 鳴り物入りでスタートした教育再生会議だが、密室審議の手法に文科省・中教審との軋轢による分かりにくさも加わって国民的な改革論議の盛り上がりを欠いてもともと影は薄かった。重要政策についての会議だから存続させたのは評価できるが、もっと見えやすい仕組みの会議に模様替えして出直してほしかった。福田首相はあいさつで「教育は誰でも一家言持っている。私も持っているが言わない」と述べたというが、それだけにオープンで念の入った論議を重ねて国民合意を作り上げていくことが大事なのではないだろうか。